加藤博和の「路線バスリサーチ」

第2回 「巨大アウトレットモール」に、路線バスはいかに対応すべきか?

First released: 01/02/05
Last updated: 01/06/29


 従来、日本の路線バス事業者の多くは民鉄・JRの直営もしくはグループ会社であったことから、バス路線は鉄道を補完するものとして位置づけられ、鉄軌道では採算が確保できない路線や、鉄道へのフィーダー(端末)輸送を担当する路線が主となってきました。 また、民鉄各社は関連事業として駅周辺や鉄道沿線に商業・レジャー施設を設けることで、施設収入とアクセス輸送の収入でダブルに稼ぐという方法を積極的に展開し、バス路線もアクセス手段の1つとして位置づけられてきました。
 ところが、モータリゼーションの進展によって、鉄道沿線のアクセスの有利性は相対的に低下し、逆に駐車場確保が容易な郊外部に競合施設が立地するようになりました。 しかも、郊外店舗や施設の多くは、広域的な展開によってノウハウを蓄積しているとともに、大規模・ローコスト経営によってコストパフォーマンスも高いことから、既存の鉄道依存型施設や駅周辺商店街では太刀打ちすることができず、施設のリストラを含む駅周辺の空洞化を進展させてきました。 また、鉄道の端末手段としてのバス利用も、自転車・二輪車やパークアンドライド(P&R)、キスアンドライド(K&R)などに脅かされつつあります。 このような、都市域でのモータリゼーションと郊外化が、もともと採算性の低い路線バス事業の存立基盤を崩してきたと言えます。

 では、路線バス事業は今後も、モータリゼーションと郊外化の波に洗われ、都心部空洞化と歩調を合わせて衰退していくことになるのでしょうか?
 従来通り、鉄道の補完・端末輸送や駅周辺施設アクセスのみを主眼としていくのであれば、それを避けることは困難でしょう。 しかしながら、鉄道と合わせた公共交通ネットワークを維持発展させつつ、郊外に拡散していく商業施設や公共施設をもうまくカバーする路線を設定することができれば、路線バスにも勝機がないとは言えないと考えます。 既に、バス専業事業者を中心として、このような方針による路線の見直しが行われつつあります。

 そこで今回は、東海地方における典型例として、2000年3月24日に岐阜県真正町にオープンした巨大アウトレットモール「リバーサイドモールシンセイ」をめぐるバス路線の再編について取り上げます。

※路線図は、「岐阜バス路線図」リバーサイドモール・リオワールド穂積の各路線図をご参照ください。
※リバーサイドモール・リオワールド周辺の地図は、リバーサイドモール公式HP案内地図をご参照ください。



「郊外型大規模小売店舗への公共交通アクセス確保」で立ち遅れていた愛知・岐阜

 新規出店する郊外型大規模小売店舗の巨大化は著しいものがあります。モールやパワーセンターの形態が主流となりつつあり、シネマコンプレックスに代表されるアミューズメントスペースとの併設も進んでいます。 その典型がリバーサイドモールやイオン岡崎ショッピングセンター(00/09/22開店)です。
 この傾向は、従来は路線バスにとって不利と思われてきた大規模商業施設の郊外展開を、逆に味方につける可能性を生み出していると考えています。理由を以下に示します。

1)巨大店舗は集客力も高いため、路線バスの設定が可能なレベルの輸送需要が発生する。
2)郊外型の場合、既存の公共交通機関が貧弱なことが普通であり、路線設定の自由度が高い路線バスがすぐに対応できる。
3)従来の郊外ロードサイド店は各店舗間を買い回る形を想定したため、路線バスで対応するのは困難であったが、巨大店舗は長時間滞在する「ワンストップ型」を目指すものであることから、路線バスに適している。
4)巨大店舗では施設や駐車場の面積が大きく、施設内での移動距離の長さや駐車場内渋滞、停めた駐車場の位置が分からなくなってしまうといった問題が生じる。また、場内シャトルバスや駐車場シャトルバスが必要となる場合もある。路線バス乗り場を建物玄関に近い便利な場所に設置することができれば、自家用車に対するバスの有利性が確保できる。
5)朝の通勤時間を過ぎてから輸送需要が発生し、夜間まで安定した需要が生じるため、車両効率がよい。

 東海3県のバス事業者の中で、早くから郊外型大規模小売店舗との連携を積極的に進めてきたのは三重交通でした。既にマイカル桑名・津サティ(バス停名は「サティ」)・ジャスコ新伊勢店などに乗り入れています。 しかし、愛知・岐阜県ではこのような例は皆無であり、そもそも大規模小売店舗の近くにあっても全く無関係な停留所名を冠していたり、近くを通っても停留所が設けられていないというのが一般的でした。 都心部が空洞化し、大規模小売店舗がどんどん郊外化していく状況下で、このような路線では交通需要に対応できないのは言うまでもありません。

 岐阜乗合自動車(岐阜バス)のリバーサイドモール乗り入れは、今まで路線バスが背を向けてきた郊外型大規模小売店舗とタイアップしたという点で画期的であり、大きな意義を持つものです。 その後、親会社である名鉄バスでも、イオン岡崎ショッピングセンターシャトルバスの運行開始(00/10/02)や、「ジャスコ三好店アイ・モール前」バス停の新設(00/10/23)などの対応をとるようになっています。


「一挙に3路線が乗り入れ」 近年まれにみる"岐阜バス"の積極策

 「リバーサイドモールシンセイ」は、『国内最大級のアウトレットモール』をキャッチフレーズに、シネマコンプレックス、レストラン、ゲームセンター、クワガーデン(温泉)なども併設された大規模複合商業施設で、商圏を周囲100km圏と想定し、駐車場も5000台用意されています。 さらに、従来からその南東にあった商業施設「リオワールド」や周辺のロードサイド型店舗群と合わせ、巨大なショッピングコンプレックスを形成することになりました。
 リオワールド周辺はもともと農業地域であり、道路がそれほど整備されていなかったことから、道路混雑はもともと問題になっていましたが、リバーサイドモール開店によってさらに激化するという懸念が生じました。 しかも、最も近い公共交通機関である名鉄揖斐線政田駅からも1km以上離れており、自動車を使用できない人は来店が困難な状況にありました。

 そこで、リバーサイドモール・リオワールドへの公共交通機関を確保するために、JR穂積駅からの直行バスを運行することとしました。また、リバーサイドモールとリオワールドは500mほど離れており、しかも各施設自体の規模が大きいことから、自家用車来訪者の便も考慮し、双方を結ぶシャトルバスの運行も考えられました。 これを岐阜バスが受託し、穂積駅前〜リオワールド間は路線バス「穂積・リオワールド線」として、またリオワールド〜リバーサイドモール間は無料シャトルバスとして運行されることとなったわけです。 穂積・リオワールド線(30分ヘッド)がシャトルバスにスルー運行するとともに、それと交互にシャトル運行のみのバスが走ることで、シャトルバスは15分ヘッドが確保されています。

穂積駅前で発車を待つ穂積・リオワールド線のバス
穂積駅前で発車を待つ穂積・リオワールド線のバス

 ところが、岐阜バスの路線新設はこれにとどまりませんでした。
 リバーサイドモールのある真正町には従来、岐阜バスも含めてバス路線が全く存在していませんでした。町の東西を名鉄揖斐線が、南北を樽見鉄道が走っており、公共交通機関はこれで十分であったと言えます。 しかし、リバーサイドモールは既存の鉄道路線から離れている一方、岐阜市内からは大縄場大橋・島大橋を経由する主要地方道岐阜関ヶ原線が整備され、道路ではほぼ直線的に結ばれています。 そこで、ここに路線バスを走らせることで、リバーサイドモールへのアクセスと真正町・北方町への便を同時にカバーするという考えが生まれ、全くの新設路線である「真正北方大縄場線」(新岐阜〜北方円鏡寺前〜真正町役場前〜リバーサイドモールシンセイ)が誕生しました。

真正北方大縄場線の運行を知らせる看板
真正北方大縄場線の運行を知らせる看板(新岐阜駅前電車通り1番乗り場にて)

 さらに、真正町の南にある巣南(すなみ)町と新岐阜の間を結ぶ「美江寺穂積線」(新岐阜〜市民病院前〜美江寺〜唐栗農協前)にも目が付けられました。 この路線は旧中山道を走っていますが、末端部の巣南町内では利用客の減少によって1999年9月末での路線廃止がいったん決まったものの、沿線住民や町の反対でとりやめになったというような状況でした。 ところが、リバーサイドモールは美江寺穂積線の終点の唐栗(からくり)農協前から真北に2km強行ったところにあることから、路線を延長してリバーサイドモールに乗り入れることで、この沿線からリバーサイドモールへの需要を取り込もうと考えたわけです。 その結果、美江寺穂積線もリオワールドまで延長されることとなりました。ローカル路線が大規模小売店舗によって救われた形です。

 結果的に、リバーサイドモール・リオワールドへの路線バスは、JR穂積駅からの路線のほかに、新岐阜からも2路線が運行することとなり、リバーサイドモール・リオワールドはそれまでの公共交通空白地帯から一挙に便利になりました。新設路線と、その後の各種変更の実施の詳細に関しては別表にまとめています。


路線設定に見られる「細かな工夫と戦略」

 リバーサイドモール開店に伴う岐阜バスの路線新設・延長策は、本数が過剰となっていた他路線の減回によって実現したものであるとはいえ、このところ廃止や減便の話ばかりの路線バスにとって久々の明るい話題となりました。
 この新しい試みを成功させるために、岐阜バスは路線設定において様々な工夫を行いました。

1.渋滞に巻き込まれないような経路を設定
 リオワールド周辺は従来から渋滞が問題となっており、リバーサイドモール開店によってさらに道路混雑が激化することが予測されていました。 そのため、路線バスもその渋滞に巻き込まれないような経路にすることが検討され、結果的にいずれの路線も、主要道路でない「裏道」を通って乗り入れるように設定されました。 例えば真正北方大縄場線は、主要地方道岐阜関ヶ原線を通らず、北側からリバーサイドモールに入る経路をとっています。
 また、シャトルバスや美江寺穂積線の発着点であり、バスターミナル(転回場)が設けられたリオワールドバス停(本館東口)の位置は、リオワールドの物品搬入口の向かい側となりました。 これは、大規模店舗の設計では一般に、買物客による渋滞に巻き込まれないような場所に搬入路を設定することを利用したもので、イオン岡崎SCでも同様に搬入路からバスの乗り入れを行っています。

2.路線バスとシャトルバスとのスルー運行
 既に述べましたが、穂積・リオワールド線は場内の無料シャトルバスとスルー運行しているため、乗り換えることなくリオワールド・リバーサイドモールの各地区に行くことができます。 このように、アクセスの路線バスと場内バスとが完全に直通しているのは珍しい例と言えます。

3.乗り入れ開始日を開店日から遅らせる
 せっかくの巨大ショッピングセンター乗り入れ路線ですから、本来は開店と同時に乗り入れを開始したいところですが、開店時にはセールやもの珍しさがあって大変な混雑となり、周辺道路や駐車場も大渋滞となるのが常です。 したがって、リバーサイドモールのオープンは3/24であったものの、バスの運行開始は混雑が一段落すると思われる1週間後の4/1となりました。 これはその後の大規模店舗乗り入れでも踏襲され、例えば「アイモール・ジャスコ三好店」(00/10/28開店)への三好町福祉バス乗り入れは12/1、「イオン四日市北ショッピングセンター」(01/01/27開店)への三岐バス・四日市市運行バス乗り入れは2/5となっています。

4.とりあえず路線を引き、後で途中停留所を新設
 新設・延長区間の中で、当初から途中の停留所が設けられたのは、真正北方大縄場線の真正町・北方町内および岐阜市立女子短大のみで、その他の区間では全く設置されませんでした。 これは、停留所を設けるために必要なバス待避スペースが整備されていなかったため、交通安全上設置できなかったことが原因と考えられます。 しかし、バスが運行していても停留所がなければ、沿線としては何のメリットもありませんから、運行開始後は必然的に住民や自治体から停留所設置の要望が出てくることになります。 その後、穂積・リオワールド線と美江寺穂積線では地元がバス停車スペースを整備し、途中停留所が追加されました。
 このように、とりあえず路線を引いてしまい、後で地元要望を受ける形で停留所を追加するという方法は、停留所位置の選定が交通安全や近所迷惑といった問題で困難な場合が多いという実状を考えると、有効な方法であると言えるでしょう。
 真正北方大縄場線の岐阜市内区間(島・曽我屋地区)には現在でも停留所が設置されていませんが、これは既存路線である岐阜市営バス曽我屋線との関係が原因であると思われます。


施設側も「今までにない配慮」を実施

 リバーサイドモール側でも、今までの東海3県の大規模小売店舗にはなかったような、路線バス乗り入れへの配慮を行いました。 リオワールド本館東口のバスターミナル(元は駐車場だった)や各シャトルバス停の設置、建物内のバス乗り場への案内標識(リバーサイドモールのみ)やパンフレット・館内放送等によるバスの案内など、いずれも東海3県では珍しい試みです。 シャトルバス停は店舗の入口に近い位置に置かれ、特に新設のリバーサイドモールでは雨に濡れることのない位置に設置されました。さらに、リバーサイドモール開店時の新聞広告・CM・ポスター等での宣伝でも、穂積・リオワールド線直行バスのみではありましたが、案内が付け加えられました。
 しかしながら、バス停での案内掲出には当初は多くの不備が見受けられました。 シャトルバス運行案内地図においてバス停と建物との位置関係が分かりにくかったことや、リオワールド本館東口とリバーサイドモールぬくいの湯に分かれている路線バスの乗り場案内が行われていなかったことです。 また、施設のインフォメーションでも、当初はバスに関する質問をしても要領を得なかったようです。最近ではこれらの問題点も少しづつ改善されてきており、例えばシャトルバス停には[1]から[6]までの番号が振られ、新しくなった掲出案内地図や路線バス案内と対応させています。 インフォメーションでも乗り場について教えてくれるようになり、バスカードや定期券も購入可能です。
(01/06/29追加)
※現在、インフォメーションにおけるバスカード・定期券の販売は取りやめになっております。


リバーサイドモール内のシャトルバス停案内看板
リバーサイドモール・モール館内のシャトルバス停案内看板。大規模小売店舗でバス停位置が案内されるのは珍しい。


「リバーサイドモールシンセイ」バス停に掲出されている案内地図
「リバーサイドモールシンセイ」バス停に掲出されている案内地図


しかし、利用は今一歩・・

 私は今まで、リバーサイドモールを4度訪れています。
 最初は開店前夜、バス路線調査のため訪れました。真新しいバス停が駐車場内に建っているのを見て、「いよいよ東海地方にもこういうバス路線ができるのか」と感動したのを覚えています。
 運行開始日の4/1、この日はその後別の場所を調査する関係上、自家用車で訪れました。 ところが駐車場はほとんど満車である上に、誘導員も慣れていないために場内はクルマで大混乱。入り込んでしまうと迷路のように出られなくなってしまう有様で、結局場内に駐車することを断念せざるを得ませんでした。 このような状態でしたので、駐車場内の道路を走行するシャトルバスもスムーズに運行できるはずがありません。シャトルバス停を店舗入口になるべく近い便利な場所にしたことによって、バスの動線が駐車場内の店舗近くとしたことで、逆に自家用車の渋滞に巻き込まれる形になってしまったのです。 しかし、施設へのアプローチとなる道路では、路線バスは渋滞にあまり巻き込まれていませんでした。裏道から入るという戦略が功を奏したようです。クルマで来たことを後悔しても後の祭りでした。
 3度目は昨秋のある休日の夜、自家用車で出かけた帰りに立ち寄りました。夜のため駐車場渋滞は全くありませんが、店舗内には少なからず客がいます。 リバーサイドモールを含め、近年の大規模ショッピングモールは夜9時や10時まで開店していることが一般的ですが、穂積・リオワールド線や無料シャトルバスは18時台までしか運行していません。 モータリゼーションは都市を郊外に拡大させただけでなく、活動時間を夜間に拡大させたという意義もありますが、路線バスがその流れに対応することは難しいのかと思ったりもしました。

 そして4度目は1月中旬の土曜、調査のため路線バスで訪れました。これがリバーサイドモール関連路線の初乗車となります(美江寺穂積線はリオワールド延長以前に数回乗車しています)。 利用状況は、私が想像していた以上に芳しくないものでした。そこそこの利用があるのは真正北方大縄場線のみで、穂積・リオワールド線と美江寺穂積線延長区間はバーゲン時期にもかかわらずほとんど乗客がいない状態。 穂積・リオワールド線の運転手に日常の利用状況を尋ねると、一言「乗らん」と答えが返ってきました。途中停留所からのリバーサイドモール・リオワールドへの利用も、岐阜女子短大を除いてはそれほど目立たないようです。

 施設そのものの集客は堅調に推移しているにもかかわらず各線の利用が伸び悩んでいるわけですが、調査をした結果、各路線の改善必要点として以下のことが浮かんできました。

穂積・リオワールド線
・「直行バス」として最もPRされているにもかかわらずあまり利用されていない。これは、この路線の基本的な部分に問題がある証拠である。
・まず、JR穂積駅発着という点。名鉄沿線から利用できない上、99/12/04のダイヤ改正で列車本数が半減し、さらに地位が低下している。特定運賃区間でないため、名古屋方面からの運賃も岐阜に比べて割高。
・リオワールドは穂積駅の北方にあるにもかかわらず、乗り場が駅南口であるために、駅周辺の経路が冗長になってしまっている。
・穂積駅南口ロータリーは狭いこともあって違法駐車がひどく、バスが乗り場で待機・客扱いすることが難しい。待合施設もなく、慣れない人にとってはバスに乗りづらい。
・大部分が変化に乏しい田園風景の中を走っており、正直なところ乗っていて退屈な路線である。距離もかなりあり、岐阜発着に比べての優位性が小さい。
・無料シャトルバスと直通運行し、場内各停留所で乗降できるという利点が、実際に乗ってみないと分からない。運転手によるアナウンスでフォローしているが、これでは宝の持ち腐れである。
・有料区間の運賃扱いが問題となる。穂積駅から来る場合には、境界となる「リオワールド」(本館東口)で運賃精算を行う必要がある。 そのため、当初(途中停留所がない時期)は運賃先払いとなっていた。その後、一般的な後払い方式になったが、私が穂積駅から乗車した時も先払いを求められた。乗客が少ないから可能な対応であると言えるが、根本的な解決はなかなか難しい。
・「リオワールド」停(バスターミナル)の位置は、シャトルバスでは「本館東口」となっているが、実際には物品搬入口の向かい側であり、客の入口まで行くには歩道のない道路を歩く必要がある。 しかし、そのことを知らない客がここで降りてしまう可能性がある。

リオワールド本館東口バスターミナル
リオワールド本館東口バスターミナル。位置が不便であり、待合施設もない

真正北方大縄場線
・新岐阜やJR岐阜駅から直通でリバーサイドモールに行くことができるため、最も需要が高い路線であり、実際にも利用は多い。「直行バス」と位置づけるのはこの路線の方が適切であり、岐阜バスが独自にこの路線を新設したのは正解と言える。
・無料シャトルバスと接続ダイヤになっていない。例えば、新岐阜行きはリオワールドからのシャトルバスが着く直前に発車してしまうダイヤになってしまっている。
・リバーサイドモールの停留所位置が、北端の「ぬくいの湯」にあるためやや不便である。シャトルバスの「リバーサイドモール本館」「モール館」停の方がより便利な位置にある。 新岐阜行きは、シャトルバスの「リバーサイドモール本館」停の前を通って駐車場を出る経路をとっているが、この停留所では客扱いしない。 ところがこの停留所は利用しやすい位置にあるため、案内看板が出ているにもかかわらず、しばしば間違えてここで新岐阜行きを待ってしまう客がいる。 さらなる誤乗防止策が必要であるが、そもそもこの停留所でも乗車扱いすれば解決するとも言える。

リバーサイドモール館バス停
バス案内地図が掲出されている「リバーサイドモール館」バス停。便利な位置にあるが、路線バスはここを通らない

美江寺穂積線
・もともと、真正北方大縄場線に比べて運行時分が長く運賃も高い。新岐阜方面からの利用は期待できない路線である。 ただし、新岐阜の乗り場は、真正北方大縄場線が電車通り1番乗り場である一方、美江寺穂積線はバスセンター3番乗り場と有利な位置にある。真正北方大縄場線のバスは現状でもバスセンター内で待機しているので、慣れない乗客の誤乗防止を考えれば真正北方大縄場線もバスセンター発着にするのが理想的と言える。 (なお、美江寺穂積線はJR岐阜駅を通らない。)
・沿線からの利用を喚起したいところであるが、不便な「リオワールド」(本館東口バスターミナル)終点であり、しかも穂積リオワールド線のようにシャトルバスと直通しないため利用しづらい。
・リオワールド付近の乗り入れ経路が冗長である。リオワールドの南西から北進し、いったんリバーサイドモール駐車場南側、リオワールド駐車場北側をかすめた後、南に折れてさらに西に曲がってリオワールド本館東口に入る。 これなら、リバーサイドモール南側のところに停留所を設けてもよさそうである。

無料シャトルバス
・路線バスとのダイヤ接続が全く考慮されていない。各停留所には穂積・リオワールド線と真正北方大縄場線の時刻が案内されているが、次に来るシャトルバスに乗ればその路線バスに乗り継ぐことができるかどうか分からなければほとんど無意味な情報である。
・穂積リオワールド線のみが直通運行しているが、全路線、特に、利用の多い真正北方大縄場線が直通運行すべき。 この路線の発着点であるリバーサイドモール(ぬくいの湯)は1バースしかなく、ここで新岐阜行きが待機しているとシャトルバスが入れないことが、シャトルバスと接続ダイヤにできない原因でもある。 「ぬくいの湯」からシャトルバスになってリオワールドを回り、再び「ぬくいの湯」「本館」を通って新岐阜に向かうルートをとれば便利である。ただし、30分ヘッドのままこのルートを実現するのはダイヤ上困難であるが、やや余裕のある現在の運行時分を見直すことなど、検討の余地はあると思われる。
・リオワールド側のバス停位置が悪い。バスの運行を考慮しないで施設を設計し、後で乗り入れるケースの宿命である。
・同様に、シャトルバスの走行環境を保証する動線が確保されていないため、混雑時は運行に支障をきたしやすい。
・駐車場利用者が使えるような停留所がほとんど設けられていない。自動車による来訪客にも使ってもらうための工夫が必要である。
・路線バスの「リオワールド」「リバーサイドモールシンセイ」各バス停とシャトルバス停留所で名前が違うのは混乱の元。 例えば「リオワールド本館東口」→「リオワールドバスターミナル(本館東口)」、「リバーサイドモールぬくいの湯」→「リバーサイドモールシンセイバス停(ぬくいの湯前)」などと変更すべき。

 その他、改善が必要な点としては、
・場内やバス停の案内看板・標識の見直し。また、リオワールド内では案内がバスに全く対応していない。
・リオワールド本館東口バスターミナルは不便な位置にあるので、そこまで行くための安全な歩道や、待合施設の確保が必要。
が挙げられます。

「リバーサイド本館」バス停とシャトルバス
「リバーサイド本館」バス停とシャトルバス
女性は「ここから新岐阜行きに乗れないのはなぜか?」と運転手に尋ねていた



ハード・ソフト両面での事前準備、そして店舗との協力が不可欠

 リバーサイドモールと同様の大規模ショッピングモールでありながら、トヨタ自動車系ということもあってか公共交通アクセスが全く考慮されなかったカラフルタウン(柳津町、00/11/10開店)の周辺では、町議会で大きく取り上げられるほどの大渋滞が起きています。 大店立地法が施行され、大規模商業施設の交通インパクトが問題視されるようになっている昨今、路線バスによるアクセス確保はその緩和策の1つとして検討していく必要が大いにあると考えます。

 リバーサイドモールでは、バス乗り入れに関する多くの問題点が浮かび上がりました。これらを事後的に解決するのは困難と言えます。今後ぜひ必要なのは、施設設計時点でのバス対応です。この時、バス事業者は新施設の計画をいち早く察知し、積極的に乗り入れを申し入れたり提案する姿勢を持つことが必要となります。 2年ほど前に、ある愛知県内の某事業者に「なぜ○○ショッピングセンターの前に停留所を設けないのか? 利用者が遠いバス停までわざわざ重い荷物を持って歩いているのに。」と聞くと、「頼まれなかったからやらなかった」という返事でした。 残念ながら、バス事業者が待っていても向こうから頼んできてくれる時代ははるか過去となってしまいました。今は、大規模小売店舗の方が圧倒的に力が強いのです。規制緩和の結果、自分から頼みに行かなければ新規参入者にとられてしまうというケースも出てくるでしょう。
 施設設計時点でのバス対応とは、動線(専用レーン)や停留所スペース(玄関に近く雨に濡れないところへの乗り入れ)・待合所(店舗内でバス停が目の前に見えるところが理想、バスロケーションシステムの設置や、ファーストフード店等との併設も有効)の確保、施設内案内表示への配慮を行うことです。 これが十分になされないと、せっかく乗り入れても、駐車場渋滞にまきこまれたり、停留所位置が不便でどこにあるか分からないといったことになってしまい、乗り入れの意味がなくなってしまいます。

 ソフト的には、店舗PRにバスでのアクセスを宣伝してもらうことや、逆にバス車内・車両(ラッピング)・バス停等で店舗をPRするといったバーター協力も重要です。リバーサイドモールでも全面広告車が走っていることがありますが、こういったタイアップは相乗効果をもたらすと思われます。 さらに、無料の駐車場に対抗して、一定以上の買物客には帰りのバス運賃を割引したり、温泉等とのセット料金を設定するといった料金面での優遇措置もぜひ導入したいところです。
 以上のようなハード・ソフト両面での早い時期からの対応によって、「バスで○○に行くと便利でラクでしかもおトク」という新提案をできるようにしていくことが、今後の大きなテーマであると考えています。

 リバーサイドモール開店という機会に積極的に対応した岐阜バスに比べ、従来からこの地域の公共交通を担ってきた名鉄揖斐線や樽見鉄道はなすすべもありませんでした。速いスピードで動いていく商業のダイナミズムにローカル鉄道が対応するのは事実上不可能と言えます。 また、リバーサイドモール南西の大垣市を本拠とする名阪近鉄バスは乗り入れを実施しませんでした。この選択は今のところは正解と言えるかもしれません。 しかし、名鉄揖斐線末端区間と谷汲線の01年9月末廃止が確定した今、揖斐線残存区間に並行する岐阜バス真正北方大縄場線の重要性が相対的に増し、駅前スペースに余裕がなく商業集積も少ない揖斐線黒野駅に代わってリバーサイドモールが揖斐郡各地へのバス路線の結節点として機能するというシナリオも考えられなくはありません。

 「リバーサイドモールシンセイ」は、アウトレット好きのみならず、バス好きにとっても目を離せない存在です。


(01/04/10追加)
※2001/04/01から、リオワールド〜リバーサイドモール間無料シャトルバスは「土日祝日のみ運行」となりました。このため、穂積・リオワールド線も、平日はリオワールド止まりとなり、リバーサイドモールまで行くことはできなくなっています。


(01/05/11追加)
※その後、いつからかは不明ですが、リオワールド〜リバーサイドモール間無料シャトルバスは「平日は30分ごと、土・日・祝日は15分ごとに運行」となっているようです。すなわち、穂積・リオワールド線の無料シャトルバス直通は復活し、リバーサイドモールまで行くことが可能となっています。



戻る

加藤博和の「路線バスリサーチ」#2 −東海3県の路線バス情報のページ